鮎通信(第2回)
2014年5月







 
目には青葉 山時鳥(やまほととぎす) 初鰹(はつがつお)    山口素堂



   今の時期、新緑は目にまぶしく、里山ではしきりに山ほととぎすが鳴いて、目も耳も楽しませてくれ、さらに口に美味しい初ものがいただけるとは初夏はまことに幸せな季節といえよう。初もの好きの江戸っ子が女房を質に入れても食べたがった初鰹。博多っ子も初もの好きでは人後に落ちないと思っているが、初鰹に血道を上げたとはあまり聞いたことがない。博多で初鰹にあたる食べ物はさて何だろう?

 私は、しばしばわが家で食事をともにしようと人を呼ぶ。おそらくこの癖は祖母ゆずりであろう。祖母は、家でぼたもちを作っては、市内に住む姉妹を呼び、お茶とぼたもちでいつまでも話しに興じていた。私が育った家は法事ごとが半年に一度は開催されるほど、仏壇にはお位牌がところ狭しと並ぶ仏さまの多い家だった。法事の度にほぼ懐石料理に近いご馳走を作って親戚を呼んでいた。おかげで小学4年生ぐらいから野菜を洗ったり、漬物を切ったり、出汁巻卵を作らされて料理の腕が鍛えられた。

 長年の友人が「最近物忘れがひどくなって、娘にしょっちゅう叱られている」としょげかえっていたから、わが家に呼んで鍋ものを作って楽しんだ。ほんの短い時間だったが、厳しい現実からひととき離れることが出来て気分が休まり、笑顔を取り戻して帰っていった。食卓を囲む笑顔は「美味しいね」の一言があってこそ。お金がかからずに人に喜んでもらえるのは自分で料理することに尽きると思う。これからも、せっせと人を呼んで食卓を囲むつもりだ。

 最近私は、一日一日を悔いなく生きようと、しきりに思うようになってきた。一日の終わりには、「今日一日、真心に反することはなかったか。言葉と行ないに恥ずかしいところはなかったか。気力が欠けてはいなかったか。努力不足ではなかったか。不精になってはいなかったか」。五つの反省を心に問いかけては、生きる指針としている。